誰にでも守るべき生活がある。
どんな人間であろうと生きている限り、部屋から出なければならないときがある。
どんな理由があろうと生きている限り、椅子から立ち上がるときがある。
どんな廃人だろうと、PCから離れなければならないときがある……!

それが「生きる」ということ。

子供は学校に行き、
大人は仕事に出掛け、
学生は勉学に勤しみ、
社会人は就労に明け暮れ、
主婦は家事を片付け……昼ドラを見る。

誰にでも守るべき生活がある。
ヲタレンジャーも例外ではない。
これは、そんな世間の荒波に右往左往する一人の男の物語である。

時は2008年8月。

当初、
「アヒャヒャヒャ! ヲタレンジャーとか作って2ちゃんねるで叩かれるのじゃわい!」
と、のたうち回り二人で領土戦ぶちかましたハゲとバカのヲタレンジャーの2トップであったが、
「あれ? なんか叩かれるどころか逆に応援されてね……?」
と、首を傾げ始めた8月初頭。
なにかよい感じに受け入れられつつあるヲタレンジャーの次の獲物は、

「も組じゃー! ベテルギウス最大のネタギルド、も組にワシらは挑むぞぃ!」

その一言が、今回の事件の始まりであった。

ジジイは憤慨していた。
「ワシらを差し置いてべテルbPネタギルドを名乗るとは笑止千万! 正に神をも恐れぬ所業じゃわい!」
その台詞を聞き流しながらヤンキーは言った。
「神、ねぇ…………」
「なんじゃ、ヤンキーよ?」
何故か哀れみを込めた視線でジジイの頭頂部(ハゲ)と見つめるヤンキー。
「…………」

神、ねぇ…………

かみ、ねぇ…………

髪、ねぇ…………

髪がねぇ

髪がないジジイ

ハゲ

哀れみの視線のヤンキー

視線の意味に気付くジジイ

口論するいつもの二人

「誰がハゲじゃと小僧!」
「おいおいまだ何も言ってねぇよ。 というかよくわかったな」
「ワシを誰じゃと思っておる! わかりにくいギャグを振りおって……おまえさん天才かとおもったわ!」
「はっはっは、いやいやそれほどでも」
「まぁ、ヤンキーは紙一重でバーカじゃがの」
「誰がヘタレだと貴様ぁー!」
「へたれなんぞ言っとらんわぃ。バーカといったんじゃ馬鹿者」
「私の直接伝えるのは可哀想だから、遠まわしに生暖かく視線に哀れみを込めて伝えてあげよう
という優しさが何故ジジイには理解できない?」
「優しさが一片も見当たらない時点でダメじゃと気付けバカモノ」
「はいはいよぉーくわかりました。ストレートに言えばいいのだろう。

ハゲうぜぇー

以上です」

ついに本音ブチかまし始める二人。
あははははー、と笑いながら二人の罵り合いがスタート。
「そうそうそれでいいのじゃ。バカはバカらしくバカっぽくしておればよいのじゃ。どうせなにしてもバカなんじゃしな! フォッフォッフォッフォ」
ジジイは満足そうに頷きながら、ヤンキーに向かって『バカ』を連呼する。
「毛の抜け落ちたロリコンハゲよりマシですけどねー、はっはっは」
ヤンキーは額に青筋浮かべながらの愛想笑いで、迎撃開始。
「機会音痴の巨乳バカより下は世界中のどこを捜しても存在せんがのぉ、フォフォフォ」
更にお互いの罵倒しあうハゲとバカ。
「いやいや、ハゲには敵いませんよ(訳:ジジイが一番気色悪いぜ)」
「いやいやいや、バカには負けるわぃ(訳:人類最下層が何を偉そうに)」
「いやいやいやいや、ジジイが一番うぜぇからさ!(訳:ははははははははは)」
「いやいやいやいやいや、ヤンキーが一番じゃて!(訳:フォフォフォフォフォ)」

相変わらずの仲の良さを罵り合いという不器用な手段で確認する二人。
アツい漢同士の友情の一幕である。

そんなこんなで、も組との領土戦が決定。
ヲタレンジャーのメンバーにも話は伝わり、数日後。


ここからは諸事情によりテラキモス長老視点でお送りします。

領土戦当日。
20時30分。
テラキモス長老IN。
「とととうっ!」
奇妙な掛け声と共にINするジジイ。
しかし、ギルメン誰一人INしておらず不発。
「ぬぅ! けしからん、領土戦じゃというたのに誰もINしておらんとはけしからん!」
一人、祖龍の外れでクネクネ踊りだすテラキモス。
が、飽きたのかツッコミなくてつまらなくなったのか、適当に準備するために倉庫に向かう。
窓際のサラリーマンを思わせる哀愁漂う寂しい背中であった。
「ぬぬぬ? メールが届いておる。誰からじゃ? もしや、ワシのファンからのラヴレェターかの! 
知らぬところでワシの魅力を炸裂させてしまったようじゃのぉフォフォフォ」
メールBOXを開く。
そこにはもちろんファンからのラブレター…………などではなくヤンキーからの事務連絡が一通のみ。
一気にテンションが下がるジジイ。
とりあえずメールを開く。

『はっはっはっは。この手紙を読んでいるころ、私はこの世(ベテルギウス)にはいないだろう』

そんな文面から始まったあまりにも胡散臭いメール。
あまりにもうざったいので読むのを放棄してやろうかと本気で思索するジジイであったが、どうやらその次の文章が本題らしいので続きを読み始める。

『まぁ、ぶっちゃけると、

今日の夜、ちょっと厳しいかもしれねぇかもしれねぇというかよくわかんね。出れなかったらマジ済まん。
というわけであとヨロシク。遅刻するなよーはっはっはっはっは』

「…………」
ふむ、とジジイは腕を組んで首を傾げたあと、手の平にポンと握りこぶしを叩き、
「どうやら仕事の拉致られたなあやつ」
全く意味不明の文面だが、テラキモスには一つだけ心当たりがピンポイントであった。
それは仕事場のゆとりである。
そいつは典型的なゆとりで仕事はできない仕事はよく休む仕事をよくドタキャンするの最悪極まりないゆとりであった。
領土戦を楽しみにしているヤンキーが「出れるかどうかわからない」と言葉を濁す理由は仕事場のトラブルしかありえない。
時刻は20時45分
その時点で、ヤンキーの姿はベテルギウスのどこにも存在してはいなかった……

21時00分
領土戦スタート。
最早、作戦の打ち合わせ無しで城壁に駆け上がるヲタレンジャーのメンバー達。
城壁に横一列に並んでいる途中、目の前の道から「も」のギルドフラッグが視界を前進してくる。
「おぉ、ちょっとお待ちくだされ。まだ整列中であります!」
テラキモス長老の準備中発言に、も組は行動で答えを返した。
一人の妖精がペットを召喚する。
アミー。実力トップクラスの戦闘ペットである。
「ぬぬ?」
ハゲの上に「?」を浮かべているジジイにアミーは問答無用で襲い掛かる。
「おおおお!?」
飛び降りる気満々だったジジイは戦闘などするつもりは全くなく心の準備も不十分。
余裕で瞬殺されたジジイはもちろんのこと、ほかのメンバーにも戦闘用ペットの猛威が襲い掛かる!
流石はも組というより他にない。
まさにチンピラの如き空気の読めなさ。
ベテルギウス最大のネタギルドが空気を読むはずなどあり得なかったのだ!
城壁からトウッ、も出来ず存在意義を失ったヲタレンジャー。

そんなも組にむかって一言物申すテラキモス長老。
「も組ギルドマスターのくりたもるお氏はどこじゃい! 正々堂々勝負じゃ!」
叫ぶジジイに一人の女性キャラが近づいてこう言った。

発信者「もる子」
「くりたもるおは急な腹痛のため、本日は欠席しております」

「ちょ、おま! 本人じゃろ!? 名前が思いっきりサブじゃろそれ!?」
人違いです、と言い残しクリスタルを叩きに走り去るもる子。
その横ではすき放題に暴れまわれヲタレンジャーをタコ殴り中のも組連中。
そんなも組が倒していない男が一人。

世界チャット
発信者 も組メンバー

「ヤンキーはどこだ!? 出て来いこらぁ!」

しっかりヤンキーを殺していないことに気付くも組。
世界チャットで喧嘩上等の宣戦布告であったが、それに応えたのは一人のハゲだった。

世界チャット
発信者 テラキモス長老

「ヤンキーはゆとり学生のドタキャンのため、本日はお休みであります!」

「「「ヤンキー、乙!!」」」
ベテルギウスの全員がヤンキーに同情した瞬間であった。

その言葉に飽きたのか、クリスタルを破壊するも組。

も組勝利を告げるシステムメッセージ。

領土マップを出てテラキモス長老は悔しさに身をクネクネ踊らせながら。
「うがぁーーー! ヤンキーさえおればーー!」
その台詞にヲタメンは「ええ?」と頭の上に疑問符を浮かべながら、
「特に変わらなくね?」
「世界チャ叫ぶだけじゃ……?」
「一番先に突っ込んで一番最初にいつも死ぬしな」
超正論で簡潔な事実を述べるヲタメン共。流石である。
言いたい放題のヲタメン共にテラキモス長老は、チッチッチと前置きすると。
「おいおいあのバカ突っ込ませて囮にすればその分、ワシら全員の生存率があっぷするんじゃろ? 
まぁ役に立たんから時間稼ぎにもならんがのぉー! フォフォフォフォ!」
だよなーはははは! と同意して大笑いするヲタレンジャー。
本人がいないと思って全員好き勝手言い過ぎなギルチャである。
まぁ、本人いたらもっと言いたい放題なのだが…………

そうして夜は更けていく。
ヤンキーが帰ってくる朝まで、ヲタレンジャーは黄昏に遊びに行くのであった。


次回予告

半年も更新されなかった真実。
も組戦の隠された衝撃の真実。
ウソに固められたヤツの真実。
事実は隠されたまま、半年の時を越えて明かされる。
テラキモスからヤンキーに視点が移る時、本当の物語が姿を現す。

次回予告タイトル。
も組VSヲタレンジャー 〜裏〜

ハゲの誤解と勘違いがミックスするとき、バカはもう止まらない。


もどる!!

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