10月中頃。
季節は、秋。
そう、秋といえば!

食欲の秋。
美味しい物を食べて知らない内に太り、
読書の秋。
マンガを大人買いして徹夜で読み漁り、
完美の秋。
部屋にひきこもりながらだらだらと過ごす。

気温も温かく爽やかな秋晴れの続く最高の秋であった。
部屋に引きこもりがちな我々には天気がどうだろうとまったく関係ないけどな!

え? なに? 
スポーツの秋?
んーーー…………。
わかったわかった、やり直します。
では、もう一回開始めから。

10月中頃。
季節は、秋。
食欲の秋。
美味しい物を食べて知らない内に太り、
読書の秋。
マンガを大人買いして徹夜で読み漁り、
完美の秋。
部屋にひきこもりながらだらだらと過ごす。
そして、
スポーツの秋!

『今年こそ痩せなきゃ!』と意気込んだものの、
慣れないスポーツで筋肉痛になり、
分不相応な筋トレで筋肉痛になり、
ストレッチの時点で体は軋み出す。
通販で買った健康グッズは買ったことで満足し、目新しさで最初は使い続けるものの大抵が三日坊主で部屋のスミへと追いやられ、
『大丈夫! やろうと思えばいつでもできるわ!』
まさに脂肪の如きフニャフニャの意思……!
倉庫ではホコリを被り続けた様々な健康グッズの先人達が手招きする……!
倉庫。
それは健康グッズにとって、生涯出ることは叶わない墓場である。
太陽の輝きさえ届かない。まさにお先真っ暗。
やがて、悲鳴を上げる筋肉は甘いものを求めて止まず、
『そうよ! これは昨日頑張った自分へのご褒美なのよ!』
と言い訳という名の自己防衛は完璧。
甘い囁きがカロリーたっぷりのケーキバイキングへと足を運び、
結果、金は出ていくが脂肪は溜まる。

嗚呼、スポーツの秋!
ビバ!スポーツの秋!
哀れ!ヒッキ―の秋!
秋が過ぎれば冬はあれど、春が来ることはありません……
お前らちっとは運動しろよ?

さぁ、前フリまったく関係ないけど、黒歴史の始まりです!

ヲタレンジャーもギルドメンバーを順調に増やして、現在51人。
ギルドレベルもやっと2にあがった10月。
ヲタレンジャーもやっとギルメンでダンジョンにいけるようになった10月の前半に、
『アイツ』が、突然本人に断りもなく、こうのたうちまわりやがった。

ギルドチャット。
発信者
青鼻のトナカイ(通称、チョッパー)
「ファンクラブだ! ヤンキーファンクラブを作るんだ!」

その一言でヲタレンジャー共の壮絶なヤンキーいじりが始まる…………!
これはそんなヲタレンジャーのとある一日。
思い出の1ページである。

さて。
事の顛末を語るには少々説明が必要だろう。
ギルドにはそれぞれ役職が存在する。

ギルドマスター
サブマスター
参謀
リーダー
メンバー

勧誘、宣戦、ギルドリストのコメント変更などのギルド運営に関わる設定を決められるのが役職である。
ヲタレンジャーギルドマスター = 『テラキモス長老』
ヲタレンジャーサブマスター = 『ヤンキー』
という認識がそろそろベテルギウスに認知され始めていると思う。
だが、実際には知られていない事実がある。
ヲタレンジャーには参謀。
ギルマス、サブマスに続くbRの参謀が存在していることを!

それがチョッパー。
メインキャラがどっかの某ギルドマスター。
いつでも恋人募集中だが、相手にされず、生涯独身の未来を突き進む男である。


10月18日。
午前10時。
ヤンキーはINすると同時にギルドメンバーの挨拶をすっとばして、世界チャを叫び始める。

世界チャット
発信者ヤンキー

「おっしゃーーーーーーーー!!! 今日も元気かベテルギウス! 
顔洗って朝食食べて歯を磨いたら、最後に挨拶。せーの、おはようございま〜〜〜〜〜〜す!」


ふぅ、と一息ついてヤンキーはギルメンに挨拶する。
「じゃ、私は放置しているからよろしく!」
「お前、何しに来たんだよ!?」とギルメン総出でつっこみ。
ヤンキーは首を傾げながら、
「はぁ? 何しにってそりゃ世界チャ叫びにきただけだよ?」
「それだけ? ほんとにそれだけ!?」
「もちろん! 私にはやらねばならぬことがたくさんあるからね!」
その言葉にギルメンはため息を吐いてヒソヒソと、
「(どうせまたテイルズだろ…………)」
「(今日は長老様もいないし…………)」
「(ホントこのサブマス役に立たねぇ…………)」
「(巨乳を見にアキバにでも行ってしまえと誰かいってやれよははは)」
ギルメンの容赦ない糾弾。
サブマスに対する尊敬とかサブマスに対する敬愛とかサブマスに対する信頼とか皆無のトゲトゲな突っ込みに
ヤンキーは心から(たとえ自業自得と言われても)心から悲しくなるが!
はぁやれやれ、とヤンキーは肩を透かしてタイピングする。

「おいおい貴様ら。一流のギルドってのはなぁ、みんなで創っていくもんなんだぜ? 
それがギルマスとサブマスがいないくらいでガタガタ騒ぎやがってみっともねぇったらありゃしねぇ! 
ハゲとヘタレがいないときくらい自分たちでヲタレンジャーを盛り上げてみせろや!」

ついに説教し始めるヤンキー。
突っ込みどころ満載のこの台詞をヲタレン共は華麗にスルー。
「誰か突っ込めよ!? 本気で悲しくなってくるだろうが!」
構ってもらえなかったヤンキーは逆ギレ。
「いいのか、テイルズしちゃうぞ!? いいんだな!? ボス戦に突入してもいいんだな!?
 止めるなら今のうちなんだからねっ! い、いまなら……考え直しても、いいよ……?」
「はいはい、ツンデレ萌えー(棒読み)」
「テイルズいってらっしゃい(止める気無し)」
「というか、いてもいなくても一緒だから好きにするといいよー(一番残酷)」
「うわーーーーーーーーーん!!!(ヤンキーマジ泣き)」
マジ容赦ない突っ込みに、ついには不貞腐れて完美世界を放置し、XBOXの起動する。
そして、ボス戦に突入するという所で視線をチラリと横のモニターに向けると、

世界チャット
発信者チョッパー。

「ヤンキーファンの皆さんお待たせしました!
ただいまルームにてヤンキーファンクラブメンバー募集中です!
みなさんどしどし集まってください!!」

そのとき、ヤンキーはこう思ったという…………










ヤンキー心の叫びである。
もちろんタイピングしようと思った。
マジ説教をギルチャでかましてやろうと思った。
よそ見しているしている間に何があったんだと問い詰めることも思ったさ!
しかし、一度始まったボス戦を止めることなどできるはずも無く。

「あ、くそ! こいつら好き勝手いいやが、あぁまずい回復、あぁまにあわ、
ぎゃーやばいやばいやばい、よし、立て直した…………こいつら人がボス戦でタイピングできないことをいいことにすき放題しやがって、
うわボス来たボス来た逃げろ逃げろ、ぎゃーぎゃーぎゃー!」

―――5分後。
そこには一つの戦場を越えた一人の青年がいた。

椅子に背を預け、メガネを外し、前髪を片手でかき上げ、憂鬱そうにため息を吐いた後、
一口だけミネラルウォーターを飲み、足を組みなおして、メガネのレンズに息を吹きかけて丁寧に拭き、
中指でメガネを押し上げながら、PCに向き直して……

「お前ら何しとんじゃーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

いまだかつてないほどの高速タイピングで突っ込みを入れるヤンキー。
そこでさらにチョッパーが世界チャットを追加しやがった。

世界チャット
発信者チョッパー

「ヤンキーファンクラブはまだまだ開放中! ヤンキーファンの皆さんは是非ルームに遊びにきてください!」

世界チャで叫ばれたら世界チャで突っ込むのがヲタレンジャーである。
速攻でヤンキーは世界チャで叫ぶ!

世界チャット
発信者ヤンキー

「お前ら…………私が衝動買いしたテイルズしている間に何しとんじゃーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

「おまえがなにしてんだよ!」とどこぞの誰かから突っ込まれたが返信している余裕はない。
ヤンキーは即座にルームを探し始める。
そのルームは3秒で見つかった。
ルームは入室するまえに何名居るか予め分かるようになっている。
そこには15名のアホゥ共が鎮座ましましていやがった。
そく怒鳴り込むヤンキー。
「もう何回でも言うけど、お前ら揃いも揃って何しとんじゃーーーーー!!」
「おぉ本人きたぁーー!」と喜びだすバカ共。
ヤンキーはチョッパーを指差して怒鳴る。
「これは何の集まりだよ!? 言いだしっぺ! 代表して答えやがれこのばか!」
で、チョッパーは簡潔に一言で答える。
「ファンクラブ」
「非公式じゃねぇかよ! 本人は了承してねぇよ!? というか私の意思はどこに? 
地中か? 深海か? 宇宙の果てか!?」
「あぁ大丈夫。安心してくれヤンキー」
「何をだよ!?」
チョッパーは親指をグッと立てて爽やか笑顔で頷いて。
「完璧に無視して勝手に進めるから心配しなくていいぜ!」
周りの一同も「ウンウン」と一様に頷いて賛同する。
「それのどこが安心できるかぁぁぁーーーーーーーーー!」
そして暴れるヤンキー。
完全にヤンキーいじりの雰囲気が整いつつあるこの室内。
後々考えれば無視すればよかったものを、いちいち返答するから遊ばれることに気付かないヤンキーは
完璧にファンという極悪非道の暇人たちの暇つぶしの道具を化し、オモチャとして弄ばれるのである。

15分後。

ルームが突然閉められ、チョッパーがログアウト。
ゼーハー、と肩で息するヤンキーはニヤリと口元を歪めながら高笑い。
「くっくっく! チョッパーめ、どうやら落ちたようだな! これでバカ共のわけ分からん集会もシメだシメ!
 おらおら解散しろてめぇら! わっはっはっは!」

その10秒後。
「ただいもーー」
チョッパー復活。

その30秒後
世界チャット
発信者チョッパー
「はいすみません。一度落ちてしまったのでもう一度ヤンキーファンクラブのルームを立てます。
みんなもう一度集まってくださーい!」
ファンクラブ復活。

ずっこけるヤンキー。

世界チャット
発信者ヤンキー
「ってまだやんのかよこれ! 頼むから勘弁してくれぇ!」
ヤンキー、マジ泣きが入る。
でも律儀にルームに入室するヤンキーであった。

そして、その後は皆さんのご想像の通り。
暇人共が飽きるまでヤンキーは揉みくちゃに弄ばれるのであった…………

「ううっ……! もう、お嫁にいけない…………」
「いや、ヤンキー男の子だから。元々お嫁にいけないから」
「バカヤロウ! ヤンキーの心は反抗期の少年のように繊細で、今の私の心は失恋した乙女のハートのようにズタズタなんだぞ!?」
「ヤンキーは反抗期だから問題ないじゃん」
「ならいいか」
「いいんだ!?」
「わっはっはっは」
「ははははははは」
「…………」
「…………」
「うわーん! お前らなんか大ッ嫌いだぁーーーーー!!!」

かくして、
第一回ヤンキーファンクラブは無事に終了した…………

いや、第二回とか一生ないからな?
創るなよ!? 
黒歴史書けって言うから書いたけど、これ終わったからって第二回とか絶対にするなよ!
いいか! 絶対だからな!
べ、別に期待なんかしてないんだからねっ!




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