前回のあらすじ。
ヤンキーはスカイプでヲタレンジャーのメンバーと実際に話をするために
ヘッドフォンセットを秋葉原に買いに行く。

これもギルド内の信頼をより強くするための必要な行動。
買いに行くと言った以上、男に二言は無い。
有言実行。
そのために今日は完全休養にして
何人たりとも邪魔が入らないように日程を組んだのだ。
完璧な事前準備。
完全な時間進行。
携帯電話でさえ邪魔の対象。
いるのは、財布と現金のみ!
準備は万端。
たとえ電車が止まったとしても、
ヤンキーは『走れメロス』ばりの爆走で必ずアキバに辿り着くだろう。
まぁ走れメロスを読んだことはないのだけれど。

目的はヘッドフォンセット。
最優先目標であり、本日の目的である。
第一に、最初に、何よりも先にに手に入れなければならない。
ならないはずなのに、
だというのに私は何故―――

「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」

―――私はここにいるのだろうか?

これはある男の休日を完全再現したノンフィクションである。
その日の全てをこの黒歴史にて詳細を記載する。
まぁ、真剣に読んだら負けだ。
遊び半分で暇つぶし程度に読んでくれぃ!

6月28日。
午前6時00分。
カーテンを開けると青い空が見えた。
梅雨だというのに白い雲一つない素晴らしい朝。
まさに今日の未来を暗示するかのような快晴で彼は椅子から立ち上がった。
「ほんじゃ、そろそろ準備でもしようかな!」
意気込んで背筋を伸ばす一人の男。
本日の主役であり語り手、ヤンキーである。
「…………(×5)」
その意気込みをモニター越しに聴いている人物たちがいた。
ヲタレンジャーの面々である。
「(…………巨乳か)」
「(…………ヤンチー徹夜明けなのに)」
「(わざわざ徹夜明けでアキバ? どんだけ好きなんだよ…………)」
ヒソヒソとしっかり聞こえるように話すヲタレンジャー共。
しかし、その程度の罵詈雑言でヤンキーは止まらない。
気分は遠足1日前の小学生。
ワクワクが止まらず、眠れなかったヤンキー。
もちろん、徹夜でINしてました。
はっはっはっは。

「みんな。今日は急用で今から出掛けなくてはならないから、落ちる」
準備というものは色々と時間がかかるもの。
シャワーを浴びて朝ごはんをしっかり食べて歯を磨いて着替えて出発。
ヤンキーの脳内では秒刻みでスケジュールは進んでいた。
時間は待ってはくれない。
ヤンキーはモニターに背を向けて風呂場へ直行する!
その後ろで―――

「いや、急用ってヤンキー…………」
「今日は休みにしたって言ってただろ自分で……」
「というか『巨乳のお姉さんに会いに行く』ってみんな知ってるから」
「言うまでもないけど、絶対マイクの事を忘れてるよねヤンキーさん」

ヲタレンジャー総出のツッコミ。
しかし悲しかな既に部屋を出ていたヤンキーにその言葉は届いていなかったのだった…………


AM11:00
場所、秋葉原駅

見上げると、太陽は容赦無く熱線となって降り注いでいた。
周りの人々は汗でシャツがへばりついている中、
汗一つ掻かずに涼しそうな顔で、一人の男が立っていた。
否、
何故か物凄くメチャクチャ楽しそうな、嬉しそうな、期待に夢を膨らませてニヤニヤしている怪しい、
明らかに怪しいのにも関わらず堂々と一人の男が立っていた。
ヤンキーである。
「…………今日は、アツい日になりそうだな」

恐らく、萌え
それは萌えてしまうからアツい、という意味であることは特に補足する必要は無いのだけれど、
一応蛇足で入れておく。

そびえたつ鉄の塊。
見上げても視界に納まりきらない魔の城。
一度入ってしまえば、ただ(無料)では出ることは不可能だ。
魅惑的な道具の数々が人々の欲求を刺激する。
物欲を刺激する最高級の品々は家族連れからヲタクまで老若男女を問わず、
果ては国境の壁を越えて外国人でさえも金欠に落とし込む!
これを魔城と呼ばずしてなんと呼ぶ…………!
ヨド○シ。
秋葉原電気街最大級にして最大規模の超弩級家電量販店である。

AM11:20。
場所、ヨド1F入り口。

最初の一歩を踏み込んだ瞬間、ヤツは既にトップスピード。
その速さは音速を超える。
二歩目を踏み込んだときには、
店員さんの「いらっしゃいませぇーー!!」さえも置き去りにする……!
人は欲求に突き動かされたとき、誰よりも強く速く美しくなれる存在なのである。
「(一階に用はねぇ! 目当ての品は二階にある…………!)」
事前の情報収集は完璧だ。
最短のルートでヤツは商品をGETするだろう。

エレベーターのドアが開く。
ほかの客が乗り込む前に、ドアを閉める!
マッハでスイッチを押す!
ドアが完全に閉まる直前、ヤツは乗り遅れた客に向かって勝ち誇った笑みを浮かべていた。

エレベーターはゆっくりと昇っていく。
やけに時間が緩やかに進む中で、ヤンキーは目を閉じていた。
「(冷静に、そして落ち着くんだ私!)」
急いては事を仕損じる。
深呼吸をしつつ、瞑想。
ヤツの脳には、アルファー波が全開中。
今まさに一人の男が悟りの境地に至ろうとしていた。

ピンポーン!
やっと2Fに到着。
ドアがゆっくりと開く。
一歩を踏み出す。
目の前に広がる光景。
それはヤンキーの想像を遥かに凌駕していた!

「ば、ばばば、バカな…………!」

咄嗟にヤンキーは振り返る。
しかし、ドアはすでに閉まっている。
退路は既に無い。
しかしそれでもヤンキーは後ずさるしかない。
後ずさることしかできない!
何故ならその場所は―――

「レストラン街へようこそ―――!!」

ヨド8Fレストラン街。
2F飛び越えて8Fにご到着のヤンキー。
マイクではなく巨乳を選んだ瞬間であった。

「………………………………」
待て、落ち着け、落ち着くんだ私!
落ち着いて考えろ。これはむしろチャンスだ。
どっちにしてもマイクを買った後には8Fに上がる予定だったんだ。
つまり!
順序が逆になっただけだ。何の問題も無い、あぁノープログレムだ。心配ない。
この程度の問題たいしたことなんてありえるはずもない。
現在の時刻はAM11:30
レストラン街が開店しだすのはAM11:30
つまり、ジャストタイミング!
ゆっくりと昼食を食べた後でゆっくりとデザートを頂き
ゆっくりとアイスコーヒーでも飲みながら巨乳を堪能…………ごほんごほん!!!
…………まぁ8Fに着いたものは仕方が無いのでGOだな!

やけに言い訳じみていて、自分を納得させるのに時間(思考時間1秒ジャスト)がかかったようだが、
ヤンキーは人妻に教えてもらった店に直行。
ほかの店など完全無視!
一切の躊躇もせず、とある某洋食レストランに入店するのであった。


すでに店内にはたくさんの人で賑わっている。
その慌ただしい中を入店一秒で老齢の店員さんが声をかけに来る。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「はい。そうです…………」
当たり障りの無い程度の言葉で対応するヤンキー。
あまりの覇気の無さ。
それもその筈。ぶっちゃけまぁアレだ、こう……なんというか? 
ヤンキーが案内して欲しかった人物ではなかったのだよはっはっは。
ええぃ、察しろ!
直接的な表現を使うと、こう……なんか、人として終わるというか、
歯止めが利かなくなりそうっていうか、とりあえず、男には色々あるんだよ!
『もうお前ダメだろ色んな意味で』とか思っている貴方。
あえて、ツッコむな。黙って続きを読みなさい。

一番奥のテーブルに案内される。
「ご注文がお決まりになりましたら、お呼びください」
丁寧な対応で店員さんは戻っていく。
瞬間、ヤンキーの店員さんチェーーーーックが始まった!!!
「(……誰だ、誰が人妻の言っていた美人である一部分が超私好みの店員さんなんだ!?)」
机につっぷして精一杯開いたメニューを壁に全店員を捕捉する。
スパコンを搭載した空母のレーダーでさえも今のヤツの眼力には足元にも及ばない。
それが本能に突き動かされた欲求の境地。
視界に映る全ての人物が即座に前情報と照合される!
左。
「(違う)」
右。
「(違う)」
真ん中。
「(違うだろがぁぁ!)」
ちなみに、認識基準は、
女性のある一部分(ピー)を見た後に(顔)を見て(その他)は度外視。
完璧な判断である。

そこでふとヤンキーの脳裏にある可能性が浮かんだ。
「(もしかして…………シフトに入ってないんじゃね……?)」、と
最大の誤算である。
そう、いつも巨乳ちゃんが居るとは限らない。
急用で休むこともあるし、休日だという可能性だって否めない。
そうだ、何故気付かなかったんだ!? 下手をしたら、夕方からの勤務だってありえるじゃないか! 
また夕方に来なければならないというのか? あり得ない……! 
徹夜明けで電車を乗り継ぎ夕方までどこかで暇を潰しながらあと6時間も待つだと!? 
この炎天下の中で歩くだけでも地獄の一丁目の気分を味わえるというのにか!? 
死ぬ。間違いなく死ぬ。否!
 この天国に来たと思ったら奈落の底に落とされた感情の急降下でいつ心臓が停止してもおかしくない。
嗚呼、神よ! 貴方はどれだけ私に試練をお与えになるというのですか! 
嗚呼、乳よ!この世に楽園は消え去ってしまったのかアァーーーーーーーーーーーーーーーメン!!!

そんな時だった。
その声が天上より舞い降りてきたのは。

「お客様、ご注文はお決まりですか?」

ヤンキーの目線が上がる。
声の主へと誘われていく
そして、メニューの壁を取り払ったとき。

そこに、天使が立っていた。

はじめに目に飛び込んできたのは、超弩級のは質量を持った膨らみ。
服の上からでも確かめられる超絶な破壊力は全ての男性を虜にして止まないだろう。
神様グッジョブ!
心の中で左手で祈りを、右手でガッツポーズを決めた瞬間であった。
次に瞳のアルバムに永久保存されたのは、頭の上で結い上げられた髪と色気を醸し出す絶妙のうなじ。
ヤンキー審査員長の得点が99点をマーク!
優勝は確定した瞬間であった。
最後に、世界の果てを見たとしても見ることはできないであろう、どこまでも透明で吸い込まれそうな瞳。
もうほかに見るものなど在り得ない。
スタイルが良いことなど言うに及ばず、美人と評することでさえ冒涜。
運命を感じずにはいられない瞬間であった。

光の速度を超えてヤンキーのテンションが最高潮に達した!
静かにゆっくりと瞳と同時にメニューを閉じる。
「オムライスを一つ、食後にデザートとアイスコーヒーをお願いします」
漢度100%増しの渋めの声で冷静に注文する。
薄く瞳を開く。
瞬間、(ピー)のあまりの破壊力に目蓋が急降下する!
直視できない、テーブルの下で震える拳がダメージの深さを物語る…………!
息も絶え絶えなヤンキーを余所に注文を確認する美人店員。
「…………で、注文はよろしいですか?」
「はい。お願いします」
ニッコリと生涯最高の笑顔(目が開けられないので笑顔に見える)で返答する。
一礼して去っていく美人店員さんを尻目に、ヤンキーは窓の外の天気を見て呟いた。

「あぁ…………良い天気だな…………」

恐らく、AM11:45のその瞬間、
地球上の誰よりも晴れ晴れとした笑顔を浮かべていたことは疑いようも無い事実であった。


PM12:30
楽しい時間というものは走馬灯のようなものだ。
あっという間に通り過ぎていく。
しかし、それは悲しいことではない。
この思い出は心の中で行き続けていくモノなのだから。
オムライスを運んできた美人店員さんの思い出も。
アイスコーヒーの味が分からないほど凝視した美人店員さんの思い出も。
デザートのアイスが溶けていくように心に染み込んだ美人店員さんの思い出も。

あと巨乳。

その全てを胸に刻んで、男は席を立った。
もちろん最後のトリは美人店員さんの会計である。
伝票を手渡し、金額を小銭までちょうどで済ませ、レシートを受け取る。
最後にヤンキーは一言言わなくてはならなかった。
いや、この言葉は自然と零れた嘘偽りない透明な言葉。
本音という、一滴の魂の台詞。

「ご馳走様でした(二重の意味で)」

目で楽しませ、味で満足させる。
美味しいだけではない、否! 美味しいプラスαの第三要素。
料理の最後に隠し味を仕込むように、目で、心で、魂で、その空間を堪能させる。
一つの思い出を残すことのできるレストラン。
これぞプロフェッショナル。
私の23年の生涯の中で、間違いなくbP.

その言葉を聴いて店員さんは最高の笑顔と共に言う。
「またのお越しをお待ちしております」
その笑顔に後押しされ、彼は晴れやかに歩み始める。
彼の前に広がっているのは未来という無限の未来。
過去という美しい思い出に執着する必要はない。
あの笑顔を前にして、どうして留まる事が出来るというのか。
なら、彼に残された選択肢は前に進むだけ。
もう思い残すことなど何もなかった。

そうして、彼は駅へと足を進めるのであった。


PM4:25
場所、自室。

睡魔を振り切り、長旅の疲れを物ともせず、ヤンキーはPCの電源を点けた。
完美世界の起動である。

ヤンキーIN。
即座に反応するヲタレンジャー共。
「お? ヤンキーが帰ってきたぞぉーー!」
「美人だったでしょーーー?」
「巨乳は? 巨乳はどうだった!?」
「予想より早く帰ってきたな。期待外れだったのか?」
ため息を吐きながらヤンキーは言った。f

「生きているって、素晴らしい事ですよねぇ…………」

好き勝手ほざくメンバーのツッコミを無視して語りだすヤンキー。
当然、ヒソヒソと話し出すメンバー。
「(おい。なんか語りだしたぞ?)」
「(そんなに良かったのか? いやここはデカかったというべきか?)」
「(これ以上訊いたら、なにか終わるような気がするんだけど…………?)」
「(……………………どうする?)」

次の台詞をタイピングしようとした瞬間。
ヤンキーの永遠の宿敵が口を開いた!

ギルドチャット。
発信者テラキモス長老。

「ワシは小さいほうが好きじゃ」

脅威のロリコン発言である。
それをきいてこの男が反応しないわけがない!
「てめぇ! 何故あの素晴らしさがキサマには分からんのだ!?」
「黙れヘタレがっ! お前こそあの幼さの無限の可能性が何故理解できんのじゃ!」
「大きいほうが、こう、なんか、得した気分になるじゃん!」
「バカモン! 将来、垂れるんじゃぞ!?」
「てめぇ!? 言ってはいけないことを言ってしまったなジジイ!」
「純然たる事実じゃーーーーーーーーー!」

ギャーギャーとわめくジジイとヤンキー。
メンバー全員ドン引きである。
矛先が向くのが恐ろしすぎて、チャットが挿めない。
が、一つだけ人妻には聞かなければいけないことがあったのだ。

「ねぇヤンチー?」
「だから、大きいほうが目の保養に―――なんですか?」
「マイクはちゃんと買ってきた?」
「………………………………」
一瞬の静寂。
一泊の間を置いて、ヤンキーは答えた。

「当たり前じゃないですか何をおっしゃるんですかまさか買い物に出掛けて何も買ってこないなんて
あるわけがないじゃないですかやだなぁもうあっはっはっはっは」

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
その場に居る誰もがこう思った。

『あぁコイツ、絶対買ってないな』、と。

「おっとそろそろ仮眠と取るとしますかね! では夜にまた会いましょう!」

明らかな誤魔化しで速攻落ちるヤンキー。
即座に財布をもって部屋からダッシュ!
残された体力を振り絞って近くの家電量販店に駆け込むのであった。

もちろん、買っていないことは言うまでもない。
だって、レストランから駅まで直行してたからね、私!
最後まで期待を裏切らないアホであった。

そうして、ヤンキーの休日は最後までドタバタで終わったのであった。


余談ではあるが。
土曜日になると、一人の男がいつも決まった時間帯にきまったレストランに笑顔で入ってくるという都市伝説があるとかないとか。

わっはっはっはっはっはっは。


こんなこと真似しちゃダメなんだぜ?
皆は店員さんに迷惑をかけないようにマナーと常識を守って、これからも大人としての良識をもって最高の人生を歩んでいってくれよな!

最後に。
ネタです。
完全なネタであり、妄想です。
ま、まぁ、脚色とか色々入っているから真に受けるなよ!?

「お前が大きい方が好きというのは事実じゃ」
「だまれ、ジジイ!」

次回からはちゃんとした黒歴史をご期待ください♪

もどる!!

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