今日も晴れている。太陽が眩しい朝だった。
こんな日は外に散歩すると、新鮮な空気が美味しい。
洗濯も早く乾く。
太陽の光を浴びた布団のあのふっかふかな感触などは、
夜の安眠を約束しているようなものだろう
思わず、背筋を伸ばしてしまうような。
そんな素晴らしい朝だった。
「よし!」
「ん?」
隣でジジイが握りこぶしを作って踊り始めた。
「・・・・・・・・・」
不穏な空気を察したヤンキーは無言で気配を消して、脱出を試みる。
しかし、ジジイの目がヤンキーの姿を捕捉。
「ヤンキー!!!!」
「・・・・・ちっ」
速攻で呼ばれる事に嫌な予感が止まらないが、仕方が無いのでジジイの元に。
問題とは、先送りにしても解決しない。絶対。
それが難題ならば、先送りにすればするほど、余計な利子まで付いてくる。
利口な手段は、即行で片付けることである。
たとえそれが・・・・。

「今週は領土戦をするぞぃ!!!」


・・・超難問で絶対勝てない無謀な勝負だとしてもだ!!

さて、領土戦を決定したのはいいのだが・・・
「で、ジジイ。どこのギルドと当たって砕けんのよ?」
「当たって砕ける・・・・ズバリ『恋』じゃな!」
「やかましいわハゲ。さっさと質問に答えろやハゲ。というか、また思いつきで喋ってんだろてめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇ!!!」
「そ、そんなことないお・・・?」
「疑問形じゃねぇかよオオオオオオオオオ!!!!!」
「すまんのぉ。実は決めてないのじゃよ・・・テヘ♪」
「可愛くねぇんだよこのハゲェーーーーーーーー!!!!!!!!!!1」
「だから、これから相談しようとしていたんじゃろがい!」
「ウソだろ?」
「うん♪」
無言でPvP申請を送るヤンキー。
無言でPvP申請を受けるジジイ。
そして、始まる朝の恒例の挨拶
ジジイ vs ヤンキーのガチバトル!

・・・もっと普通に会話できんのかね、こいつらは?

〜〜〜2分後〜〜〜
場所はところ変わって祖龍の西
おそらく、完美ユーザーが一日一回は足を運ぶ場所。
石クエを受け取るレンシーのいる某広場にて。


「では、相談じゃ!」
「相談ねぇ・・・・」
「そうだんです! ふぉっふぉっふぉ」
「・・・・・・・・・」
もう既にありとあらゆる意味でヤル気のないヤンキー。
しかし、ジジイの暴走は誰にも止められない。

(そろそろ、何とかするとしようかね・・・・)
ここは一つ、ヲタレンジャー参謀らしく作戦を立案。

作戦名
「ジジイ暴走阻止 & ご挨拶も一緒にで一石二鳥大作戦!!」

というわけで「ある」人にササを送るヤンキー。
「失礼。お時間少々よろしいでしょうか?」
相手は「どうした?」と答える。
「今、祖龍の西にいるのですが、来ていただけないでしょうか?」
相手は快く了承する。
後は、ジジイを調子に乗せればいい。
作戦開始(ミッションスターーート)!!


「おい、ハゲ」
「なんじゃ、へタレ?」
「前にお世話になった『乱舞』様なんてどうだろう、ツルッパゲ」
「ほぅ、『乱舞』か! 良いチョイスじゃ、へタレ症候群!」
「ハゲを光らせれば、『乱舞』様なんて楽勝だろ? ドハゲジジイ」
「フォッフォッフォッ! 余裕余裕余裕のよっちゃんじゃ! 
へタレは部屋のスミでガクガク震えておるとよいわっ!!!」
「さすがはヲタレンジャーのギルドマスター! 貴方がいれば、百人力ですね! 
私には恐れ多くてとてもとても言えるような台詞じゃないな!」
「フォッフォッフォッ! ワシを誰だと思っておるのじゃ? テラキモス長老さまじゃぞ!『乱舞』? 
怖れるに足らんわ! 目の前にいたら叩き潰したるワイ!」
「さすがジジイ! そう仰られると思いまして、
すでに『乱舞』のメンバー様をお呼びしておきました!」

ジジイの表情が停止する。
しだいに汗が噴き出していく。
表情が青ざめる。
最後に踊る。
「な、なんじゃと!?」
「もうすぐ着くと思いますよ。というかこの会話、聞かれてるんじゃない?」
ていうか、すべて白チャ。
聞かれるも何もダダ漏れである。
「き、キサマ! 一体どうやってお呼びしたのじゃ!?」
「え? この間、散歩している途中に挨拶して、フレンド登録しただけですけど?」
「おまえはいつもいつも世界チャといいその無意味な行動力といい、恐れ多すぎるぞぃ!」
「そうかなぁ・・・?」
首を傾げるヤンキー。
あわわわわわ! と急に慌て始めるテラキモス長老。
「お? 来たみたいですよ、ジジイ」
そこに登場する乱舞の戦士さん。
「こんにちわーー」
「こんにちわw さっきからそこで会話を聞いてましたよw」
「ははは。だとよ、ジジイ?」
横に視線を移すとハゲが消えていた。
「あれ? ・・・・・ジジイ?」
あたりを見回すと、ジジイは端っこの壁に移動して背中を向けていた。
ジジイの背中まで歩いて、ピタッと張り付き、囁くように話しかける。
「・・・・・・ジジイ?」
「人違いです」
「逃げた!?」
「人違いです!」
「さっきの威勢はどこに行ったんだ?」
「私はテラキモスではありません。ちょっとクールなナイスジジイです」
「目を覚ませや、ジジイ!!」
「ぷげらっ!」
後ろからドロップキックを炸裂させる。
壁に頭をぶつけるジジイ。
乱舞の戦士さんは静観中。
いや、正常な人ではこの中に入ってこれないだけだろう。
むしろ、帰りたい。

立ち上がるジジイ。
「目が覚めたか?」
キョロキョロと視線を移してジジイは行った。
「ここはどこ?」
ペタペタと頭を触って。
「ワシはハゲ!?」
「どんな記憶喪失の台詞だよ!?」
不意にジジイはヤンキーを指差してこう言った。
「おまえはヘタレだ」
「目を覚ませや、つるっぱげがぁぁぁぁ!!」
もう一回ハゲに炸裂するドロップキック。
立ち上がるジジイ。
「うむ。ワシは神じゃ」
「よし。いつのもジジイだな」

そして、最初の立ち位置にもどると・・・・
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
なんか、乱舞のメンバーが増えている・・・・?

「おい、おまえら。さっきから言いたい放題いってくれたのぉ・・・」

「ヒィ!」
震え上がるジジイ
そう、白チャである。
祖龍の西はおそらくパーフェクトワールドでも一番の人通りの多い場所。
そこで思いっきりダダ漏れトーク炸裂させてりゃ、ほかの乱舞メンバーが聞いていてもおかしくはないだろう。
まぁ、私は関係ないので、こう言いました。
「わ、私は関係ないっスよ! 全てジジイの戯言です!」
「や、ヤンキー!? テメェ!!!」
「私はちゃんと様付けしていたもんね!!」

そう。
乱舞のメンバーを呼んだ後には全て「様」付けしていたのだ!
ふっふっふ。死ぬのはジジイのみよ!

「コイツ・・・! 全て計算ずくか、このヘタレがっ!」
「はっはっは! 罪は全てジジイにくれてやらぁ!」
醜い罪の擦り付け合いである。
乱舞様は面倒臭そうにこう言った。

「いや、おまえらフルボッコ確定だから」

「「!?」」
乱舞メンバーによる死刑宣告!
「とりあえず、正座な」
二人とも大人しく座る。
ちなみに転生した人が二人。
どうあっても勝てません。
「で? さっきの台詞をもう一回いってみ?」
「あわわわわわわ」
「あわわわわわわ」

アドリブで突っ走る二人。
正直、乱舞メンバーも分かってやっている。
みなさん悪ノリしすぎです。

そして、ボロクソになったヤンキーとジジイは捨て台詞を叫びながら逃げる。
「チクショウ、おまえらなんか大好きだぁーーー!」
「週末はよろしくお願いしますじゃ、コンチクショウ!」


さて、なにはともあれ。
6月。
最初の領土戦。


第二回

ヲタレンジャー VS 乱舞

リベンジ決定!


次回予告。
メンバーが増えたヲタレンジャー。
はじめてのPTプレイにアタフタするヲタレンジャー。
領土戦前の全員集合写真を撮るとき。
ジジイの姿はどこにもなかった・・・・・

次回予告。
「城壁から『トウッ』は譲らんぞぃ!!」

ジジイ。それは重要なのか?

ゲームをするのもいいけどさ・・・
モニターからは離れて見ろよ?
では、また会おう!!



もどる! inserted by FC2 system