〜前回までのあらすじ〜
ジジイ誕生日ドッキリを見事に失敗したヤンキー。
ヤンキーは自信を失い、酒浸りの生活に突っ走り、リストラ。
さらには女房にも逃げられ、借金を背負う。
希望を失い、今日もまた酒を浴びる生活。
彼のドン底への旅路は続いていく。

嗚呼、彼は一体どこに向かっていくのだろうか。


5月6日。
ゴールデンウィーク明けの火曜日。
ジジイ「おはよう!」
ヤンキー「…………おはようございます」
明らかに落胆しているヤンキー。
頬は痩せこけ、顔色は悪い。目の下にはクマ。瞳は充血し血走っている。
ジジイ「どうした、顔色が悪いぞい。というか・・・変質者じゃぞ?」
ヤンキー「気のせいですよ、きっと」
ジジイ「そうじゃの! 元からじゃからな!」
ヤンキー「(このジジイ・・・・!!)」
拳を握り締めて、プルプル震えだすヤンキー。
「(オレは大人オレは大人オレは大人…………)」と呟きながら殴りたい衝動を抑えるヤンキー。
その横で突然、ジジイがハゲを光らせて、叫んだ。
ジジイ「そういえば!」
ヤンキー「?」
ジジイ「この前は遅刻してすまんかったのぉ」
物凄い作り笑い(顔半分は引くついている)で指の骨をバキボキ鳴らしながらの棒読みで、
ヤンキーはこう答えた。
ヤンキー「全っっ然、気ニシテマセンヨ♪」
ジジイ「嘘だ!」

ヤンキー「何を仰りますかジジイたかが1時間26分15秒遅れてきたぐらいで
私がどうこう言うとでも思っているんですか ジジイというかもう遅刻とかそういう
レベルはとっくの昔に 通り過ぎているんですよジジイだからいい加減 そろそろ
怒るのが バカバカしくてやってられないというか面倒臭いというか呆れてモノも
言えないからそんな私が怒るわけがないでしょう?まったく菩薩さえも凌駕する
この私の慈愛精神に満ち溢れたこの心がジジイに対して嘘など吐くわけが
あるわけないわけもないとも言い切れないとは言い切れないかもしれない
かもしれないしとてもとてもありえないとはありえないからどうとでもなるわけがないでしょう
本当にジジイはどうしようもない人ですねぇアァ別に責めているわけでは
ないんですよそんなジジイに文句なんて言うわけがないじゃないですか
HAHAHAHAHAそれともなんですか?私がなにか間違ったことでも
言いましたか?聞いてあげましょうなんなりと言いなさいさぁさぁ!」


ジジイ「ど、どうしたヤンキー・・・? いつにも増してヒートアップしてるな!」
ヤンキー「失礼。取り乱しました」
衣服の乱れを整えて、姿勢を正す。
ヤンキー「まァ仕事ですからね、遅れてしまったのは仕方が無いですよね」
ジジイ「いんや、寝てただけだお」
ヤンキー「……………………」
ヤンキーのフォローが台無しである。
しかし、めげずにトライ。
ヤンキー「いつも頑張ってますから、その疲れが出てしまったのは仕方が無いですよね!」
ジジイ「いんや、ちょっと遅く寝ただけだお」
ヤンキー「……………………っ!」
ジジイの容赦の無い一刀両断。
ヤンキーはそれでもまだトライする!
ヤンキー「…………きっと何か用事で寝るのが遅くなってしまっただけで、仕方が無いことだよな!!!!」
ジジイ「いんや、その日は何もなかったお」
テヘ♪ と舌を出して無邪気な笑顔のジジイ。
虫けらを見るような目でジジイを睨むヤンキー。
ヤンキー「………………………………………………………………………………………………」
ジジイ 「………………………………………………………………………………………………」
ヤンキー「フッフッフ」
ジジイ「フォフォフォ」

突如笑い出す二人。

ヤンキー「フッフッフッフッフ」
ジジイ「フォフォフォフォフォ」

腰に手を当てて、腹から声を出す姿勢の二人。

ヤンキー「ハァーハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」
ジジイ「フォーフォッッフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフ!!!!」

ピタッ、と二人の笑いが止まる。

ヤンキー「そんでジジイ、今度の領土戦はいつにしましょうかーー?」
ジジイ「そうじゃのぉ〜〜」
普通の会話に戻る二人。
どうやら、今までの会話は朝の挨拶みたいなものらしい…………
ジャブにしては重すぎるスタートである。

ジジイ「ワシとしてはの、次は領土戦よりもギルドイベントを開きたいのじゃよ」
ヤンキー「ほう! いいですね!」
ジジイ「まずは手始めに、祖龍の城で『かくれんぼ』など、どうじゃろか?」
ヤンキー「ふむふむ」

その時、ヤンキーの頭の中では本能(悪魔)と理性(天使)とヤンキーによる首脳会議が開催。
悪魔「どう思う?」
天使「すばらしいイベントだわ!」
ヤンキー「問題はジジイの行動に臨機応変に対応しなければならない、ということだろう」
悪魔「ジジイ主催なら遅れてくることもないだろうからな」
天使「今から楽しみね!」
ヤンキー「しかし、問題は山済みだ。ジジイに内緒でどうやって話を進めるか…………」
悪魔「そうだな。今回失敗すればもう時期的に無理だ。慎重な行動を心掛けないとな」
天使「あ、あの……二人とも? さっきから何を話しているのかしら…………?」
悪魔「何って……」
ヤンキー「決まってるだろうが」
二人は声を揃えて言った。

「「前回失敗したジジイドッキリ抹殺計画の話だろ?」」

天使「イベントの話ではなかったの!?」
ヤンキー「アホか! 漢には全てを犠牲にしてでもジジイにドッキリを仕掛けないといけない時があるんだよ!!」
悪魔「まったく、これだから天使(理性)は…………」
ヤレヤレ、と肩を透かす二人。
天使「私なの!? 私が悪いの!?」
明らかに責任転嫁である。
しかし、常識とは常に多数決で決まるもの。
いくら叫んだところで、非常識なバカ二人に常識人一人が勝てるわけもなかった。
信じるものは騙される。
嫌な世の中になったもんだねぇ……

ヤンキー「あぁーー! あんなところにUFOがぁーー!!」
明後日の方向に指差すヤンキー。
天使「え? どこどこ!?」
視線が外れた瞬間に、天使の後ろに回りこむヤンキー。
すかさず、チョークスリーパで頚動脈を絞める!
天使「ぐえぇ!」
白目で泡を吹いて気絶する天使(理性)
悪魔「悪(常識)は滅びた…………」
ヤンキー「さぁ、新たな伝説の始まりだぜ!!!」
もはや、ヤンキーの暴走を止める者は誰も居なかった…………

〜脳内会議終了〜
ジジイ「どう思うヤンキーよ?」
ヤンキーは親指をグッ、と立てながら爽やかな笑顔でこう言った。
「とても楽しみですね是非やりましょう(棒読み)!!」
ジジイ「なんじゃろうか…………そこはかとなく悪意が感じられる気がするのぉ」
ヤンキー「気のせいですよ、きっと」
その時、ヤンキーの影は悪魔のような形をしていたという……
ジジイ「では、今週の金曜日あたりに開催じゃ!!」
ヤンキー「サー、イエッサーーー!!!!」

次回予告。
開催されるかくれんぼ。
初めてのギルドイベントで巻き起こる波乱の展開。
ジジイが時間を厳守するとき、
ヤンキーの身に何かが起こる!!!

次回タイトル。
「ごめんなさい。遅刻しました!!」
もう二度とジジイに何も言えない。
お楽しみに!!!


もどる!!

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